経営者の方の中には、「オーダースーツは最も格が高く、完璧な選択肢だ」と考えている方はとても多いです。誰もが一度は憧れを持つものですし、自分の身体にぴったりと合ったスーツを仕立ててみたいという気持ちはよく分かります。
スタイリストの立場からオーダースーツというものを改めて考えてみると、もちろん良い点と悪い点、どちらも見えてきます。特に経営者の方や医師・弁護士・コンサルタントの方など、日々忙しくお仕事をされている方にとって、スーツは戦闘服でもありますし、なるべく手間を掛けずに、それなりのものを揃えたいと思うのも当然です。
そうなると「オーダースーツ」という選択肢こそ、もっとも手っ取り早く、人との差別化ができるものだと考えるのも自然です。でもそこには大きな落とし穴があるということも、同時に理解しておくことが大切です。
世の中の9割はパターンオーダーです
オーダースーツといっても、実は世の中に存在するものの多くは、「パターンオーダー」と呼ばれるものがほとんどです。ゼロからあなたの身体や趣味趣向に合ったスーツを作る「フルオーダー」はごくごく僅かしか存在しません。そしてフルオーダーというのはものすごく高価なもので、平気で20万円以上します。これはファッションに並々ならぬこだわりがある人がひそかに楽しむものであり、よくファッションについて分からないうちにトライすべきものでもありません。
私たちにとって身近なオーダースーツというのは、自分の身体にもっとも近いサイズのスーツを試着して、そこから着丈や袖丈、身幅などのバランスを本人に寄せていく「パターンオーダー」がほとんどです。もちろんこれでも素敵なスーツは仕上がりますが、これだったら店頭でスーツを買うのとそこまで大きく変わりはありません。
特に、体型に難があって、なかなか既成のスーツを選ぶのが難しい人でなければ、わざわざパターンオーダーでスーツを作る必要はありません。というのも、オーダースーツにはいくつかの「難易度の高さ」があるからです。
生地を選ぶ難しさ
オーダースーツの場合、小さな生地見本の中から、好みの生地を選ぶ必要があります。まずこれが非常に難しい。小さな布から、完成形を予想するのは難しく、失敗も多いです。やっぱり実物を見てみないと分からないというのが本音です。僕自身、今まで何度もオーダーでスーツを仕立ててきたからこそ言えることでもあります。やっぱりイメージと違ったいうことが非常に多いです。なかなかこの辺りは上達が難しいものです。
そもそものデザインがイマイチのものも・・・
オーダースーツのお店もたくさんの選択肢がありますが、格安のところだったり、昔ながらのテーラーのお店には注意が必要です。どんなにサイズが身体に合っていようが、肝心のスーツそのもののデザインが古臭かったり、イマイチだと、絶対に素敵なスーツには仕上がりません。
信頼のおけるオーダースーツ屋さんは僕の感覚だと2割以下です。たとえば政治家の方や経営者の中にはオーダースーツを着ている方も多いですが、残念ながらサイズ感も野暮ったいですし、デザインも古臭いことも多いです。「オーダーだから安心」なのではなく、むしろオーダーだからこそダサく見えてしまう危険性は高いのです。
割高でもある
店頭に並んでいる吊るしのスーツとオーダースーツでは、完全にオーダースーツの方が割高です。たとえば同じ7万円のスーツだとすると、僕がよくおすすめするユニバーサルランゲージというスーツ専門店の既成スーツと、オーダースーツとでは生地の質が大きく変わります。
それも当然です。量販店は大量に生地を買いますので、その分だけ割安になります。しかもデザインはしっかりと今のトレンドを踏まえていますし、量販店でも袖丈や身幅、着丈などのバランスはある程度整えることができますので、パターンオーダーとそこまで違いは見いだせません。
生地の質感の違いは、経営者にとってかなり重要な項目ですので、その点でも吊るしのスーツの方が安定感があります。
オーダースーツ店の色に染まる危険性
僕のお客さまの中にも、オーダーでスーツを作られている方も多いですが、一度オーダースーツショップとの付き合いが出来ると、定期的に買い物へのお誘いがきます。そして新しいスーツを作るわけですが、今までとは違うものを提案されることが多いため、だんだんベーシックなスーツから、華美な柄や特徴のあるものに走る人が多いです。
スーツは一度買ったら数年は持ちますので、提案するお店側としても持ちネタがなくなってくるわけです。そうなると提案もまた段々凝ったものになるのも当然です。でもスーツスタイルというのは華美である必要はありませんので、柄物に走ると、途端に胡散臭くなってきます。その結果、オーダースーツ屋さんのおすすめを着ることで、かえってスーツスタイルがイマイチになる例は少なくありません。
このような理由で、スタイリストの立場からすると、オーダースーツ店はそこまでプッシュはしていません。これらはファッションにこだわりを持つようになった先に始めて選択肢の中に入れるものであって、まずはオーダーよりも、店頭で実物を見て買い物をすることをおすすめします。
信頼の置けるスーツショップを知っておくこと。
僕が自信を持っておすすめできるスーツショップは、先程にもお伝えしました「ユニバーサルランゲージ」や「シップス」「バーニーズニューヨーク」などのセレクトショップと呼ばれるジャンルです。この辺りは変にブランドネームが価格に乗っていませんし、デザインにも安心感があります。まずはこれらのショップでスーツを見てみることからお薦めします。実物を見て買った方が遥かに安心感は高いです。
まずは「オーダー=最高」という価値観を一度見直してみてください。オーダーしているのに、ちっとも素敵に見えない経営者の方は意外と多いのです。そしてスーツスタイルというのはスーツだけで完結するものではありません。
シャツとネクタイのバランス、小物選びなど、様々な要素の掛け算で印象が決まります。オーダーしていればOKという程単純ではありません。オーダーを検討されている方、またはオーダーしているけど、ちょっと違和感を覚えてきている方は、この機会にぜひ先程ご紹介したセレクトショップに足を運んでみることをお薦めします。
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